建物の外装や内装、家具など、それぞれの色の組み合わせを考えることに難しさを感じている人は多いのではないでしょうか。

 建築の専門家である私も、色の組み合わせを考えることは楽しみである一方、相当に難しさを感じている実際があります。

 私が、普段、色の組み合わせを考えるにあたり参考にしている考えを述べていきたいと思いますので、皆様が色の組み合わせを考えるに際してのヒントになれば幸いです。

①自分の好きな色で固める

 まずは、自分の趣味嗜好に沿った色や物を とにかく組み合わせるという方法です。

 これは、色や形、質感など雑多になり過ぎる、その人のセンスに大きく左右されるといった側面があり、難易度としては高めかもしれません。

 しかしながら、私の経験上、自分の好きなもので固めていくと、一見雑多に思えても、不思議と統一感が出る場合も多くあります。自分としては、バリエーションに富んだ物を寄せ集めていると思っていても、その実、自分の好きな領域内で取捨選択しているため、結果として、不思議とまとまりが出ていることがあります。

 これは、私が趣味でやっている音楽から学んだことでもありますが、演奏する曲のリストを考える時、お客さんが飽きないようにと、バリエーションに富んだ曲を選ぼうと 一見 雑多な曲同士を組み合わせたつもりでも、実際に演奏すると、自分の嗜好に沿った曲を自分の色を付けて演奏するため、聴いている人へは全体としてまとまりを感じさせるようです。これを建築において応用したところ、自分の好きなもので固めると、ひとつひとつ単体で見れば 一見 それぞれ異質な物の集まりですが、全体で見ると不思議な一体感が生まれることに気づきました。

 センスは人それぞれですので、他人からの見え方はともあれ、自分の好きな色や物に囲まれて暮らすことはこの上ない幸せのひとつなのではないでしょうか。

②2つ以下の基調色を使う

 これは建築物に限らず洋服や食器、家具などでもそうですが、2色以上の色を組み合わせようとすると、途端に難しさが増します。(3色になると実に難しい)

 基調となる色を1色なり2色決めて、それを基準に近しい色合いでまとめていくと、全体としての統一感を出しやすいです。

 白と黒のモノトーンなどが、わかりやすい例ではないでしょうか。

③落ち着いた色を基調とする

 白やグレー、ベージュ、アイボリーなど、落ち着いた色合いのいずれか1色または2色を基調色として、アクセントとして部分的に鮮やかな色を入れるなどポイント絞った色使いとすると、全体としてまとまりやすため、この方法は、比較的 誰にでも行いやすい手法と言えると思います。

 各人の好みにもよりますが、住まいは暮らしにおける大部分の時間を占める場所のため、あまり雑多な色に囲まれていると落ち着きませんし、ビビッドな色も初めは新鮮ですが段々と見慣れてしまい 年齢を重ねることで好みが変わると逆に気に入らなくなる可能性もあります。

 頻繁に模様替えをしたいと思っている人や あえてインパクトの強い非日常を演出することを意図した店舗等を除いては、基本は落ち着いた色を使い ポイントとして自分の好きな色をアクセント的に使うことで長く心地よく過ごせる住空間を作りやすくなると考えます。

④補色

 それぞれの色には補色と言われるそれぞれに対を成す色の組み合わせがあります(色相環で正反対に位置する色の組み合わせ)。例えば、わかりやすいところですと、緑と赤、青とオレンジ、紫と黄などがそれにあたります。補色を用いることで、両者の配色による対比が強調され、対象物を見つけやすく・見分けやすくなり、目を引きやすくなります。

 普段の暮らしの中で、身の回りにある色々な物を意識的に観察すると、色々なところで補色が使われていることに気づくと思います。

 色使いを考える上でのひとつの参考として活用ください。

⑤膨張色と収縮色

 膨張色とは物や空間を大きく広く見せる効果を持つ色で、白や赤、オレンジなど、一般的に明るい色や暖色系がこれに当たります。収縮色とは物や空間を小さく狭く見せる効果を持つ色で、黒や紫、青など、一般的に暗い色や寒色系がこれに当たります。

 空間を広く見せたい場合は膨張色を使うと効果的です。また、空間を引き締めたいと思う場合は収縮色を使うと効果的です。

 膨張色を広い面積に使うと広々とした印象や暖かい印象を感じやすくなる一方で、収縮色を広い面積で使うと落ち着いてはいるものの何となく閉塞的で圧迫的な印象または寒々とした印象を持つと思います。(膨張色でも原色の赤など強めの色を広い面積に使うと暑苦しい圧迫的な印象が生まれ、マイナス効果にもなり得ます)

 例えば、壁や天井など面積の広い面に膨張色である白を使い、巾木など面積が狭く細い線を形成するような部分に収縮色であるダークブラウンを使うことで、広々としつつも適度に引き締まった空間となります。このダークブラウンの巾木の色を白に変えると、何となく緊張感が和らぎ、より柔和な印象になると思います。実際には床材の色も関係するためここまでシンプルではありませんが、例えとしてわかりやすいのではないかと思います。このあたりの 色の組み合わせと色を使う場所の さじ加減は、各人の好みによるところも大きいため、自身の嗜好に合わせて組み合わせて頂けると良いと思います。

 こちらも、色使いの参考としてみてください。

⑥その他

 色だけでなく、色のツヤ、柄や材質・質感によっても、空間に与える印象は大きく変わりますが、この辺りはこだわり始めるとキリが無いため、どこまでこだわるかといったラインは人それぞれ自分の納得できるラインで設定して頂けると良いと思います。材質や質感等については、また違う機会にお話しできればと思います。

 つや : 光沢感のあるツヤツヤ(全つや)、光沢感が無いマッド(つや無し)、半つや、三分づや ほか

 材質 : 木、金属、ガラス、合成樹脂、コンクリートほか

 木 : 板目、柾目、杢目ほか

 金属 : アルミ、ステンレス、スチール、銅ほか

 アルミ : ステンカラー、シルバー、鏡面仕上げほか

 ステンレス : ヘアライン、バイブレーション、鏡面仕上げほか

 ガラス : クリアガラス、すりガラス、ステンドグラスほか

 透明度 : 透明、半透明ほか

 以上、色について簡単に述べてきましたが、皆様の日常における色使いのヒントとして頂けますと幸いです。

 これは余談ですが、色というのは、本当に奥深く、例えば、一口に白と言っても実に多くの種類の白がありますし、同じ色でも使い方によって見え方が大きく変わるなど、驚くことが多いです。これまで私が師事してきた数人の建築の師が 皆 口を揃えて言うことは、建築物を計画する際、周囲の環境との調和を図るため、使う色についても周囲の環境にある色との調和を第一に考えて検討するということです。同じ日本でも、その地方その地方によって気候や風土、緯度など環境条件が異なることにより、日の光の差し込み方や光の広がり方、光の強さなどにも若干の差異が生じ、同じ色合いでも色の映え方が違ってきます。ヨーロッパの街並みでは映える色でも、日本の環境では同じように映えないということも実際にあるそうです。それらを踏まえ、私自身は、配色において、周囲の環境の中に存在する色と調和する色で、かつ、日本に古くから伝わる伝統的な色を使うように心がけています。日本の伝統色は、古くから日本の自然環境や暮らしの中にある色であるため、日本の風土や環境において一番馴染む、一番映える色なのではないかと思います。

 私たち “ねこのて” では、色や材質等のコーディネートも含め、ひとりひとりのニーズに応じたご提案をいたします。色の組み合わせや、材料の組み合わせ、家具や雑貨等の組み合わせなど、お気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。

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