日本に暮らす以上、地震は避けて通れない災害のひとつであり、住まいを探すにあたり、その土地が地震に強い、または、あまり地震に強くないといったことが、ひとつの指標になると思います。近年では、ゲリラ豪雨や台風等による水害に対しても十分に検討する必要がありますが、地震による被害もそれと並ぶくらい重要な検討事項になるのではないでしょうか。
建物を建てるにあたり、その前段階として、敷地の測量等の諸々の調査と併せて地盤調査を行います。この地盤調査を行うことで、その土地の地盤の硬軟や、地下水位の高さ、地質、地層構成等々を示すデータを取得することができ、後日、それらを書面にまとめた報告書として目にすることができます。
その地盤調査の報告書をもとに、設計士が建物の設計を進めていきます。建物の形や荷重などと、地盤データとを照らし合わせて、建物基礎の仕様を選定します。その土地の地盤の性質上、基礎だけで建物を支えることが難しいと判断される場合は、地面の表層部分に固化材を混合して地盤改良をしたり、建物基礎の下に杭(杭基礎)を打ったりと、必要に応じて補強を施します。
上記のように、建物は、地面の上に見えている部分(上物)と、地面の下に埋まっている部分(基礎)の両方とで、一体的に建物としての安全性を構造的に担保しています。
建物の構造的な強さは、頑丈で壊れにくいことが一番かと言うと、そういうわけでもなく、地震や風などの力を受け流す・逃がす為の しなやかさ・粘り強さ も必要であり、それらをバランスよく兼ね備えていることが重要になります。
従って、地盤調査によって得られたデータをもとに、建物の上物と基礎と一体で、地震に対してより耐え得る建物となるように、建築基準法によって定まれられた要件を満たすべく、建物の構造を設計していきます。
地質については、ここでは詳しくは述べませんが、砂質土、粘性土などがあり、それぞれに特有の性質があり、その性質に合わせて建物の基礎を検討します。
地盤調査の結果、確認することができる地層の内容は、その土地、その土地で異なります。建物を支えることができる層が地表近くにあることも、または、地表面から30m〜40mくらい下まで掘らないと、その層が現れないこともあり、まさにケースバイケースです。また、同じ敷地内でも、地中において地層が上下に入り組んでいることも多くあるため、できれば、地盤調査をする位置は1箇所だけでなく、複数箇所行う方が無難です。ただし、地盤調査をする箇所数が増えるほど、地盤調査をする深さが深くなるほど、調査に係る費用が割高になるため、予算と建物の計画をもとに、どの程度の数・深さまで地盤調査をするかについて、設計士と相談した上で決定することが望ましいでしょう。
その他、地盤調査をする土地の近隣で、過去に地盤調査を行った箇所については、近隣地盤データとして記録が残っている場合もあります。このデータは、行政区によっては、無料で閲覧できる場所もあります。また、設計士を通じて地盤調査業者へ問い合わせることで、近隣のデータが入手できる場合もあります。過去のデータを参考にすることも、一案になります。
河川や海の近辺、大昔に湿地帯だったところ、海や河川・沼等を埋め立てたところなどは、地盤が弱い可能性が大きいので、調べる上での参考にしていただけると良いと思います。そうはいっても、地面の下のことのために不確定要素は多く存在し、ある地点だと地盤が弱いが、そこから少し離れた位置だと地盤が強かったりと地層が入り組んでいることもあるため、近隣データをもとにある程度の見込みを立てた上で、実際にその土地で地盤調査することが肝要です。
以上、地盤について、簡単に述べてきましたが、お住まいを探す際や、建物を建てる際、防災的な観点で今住んでいる場所の地盤について知りたいという際に、参考になれば幸いです。
0件のコメント