住まいに欠かせないモノのひとつ “窓” について、その中でも、”採光” について、今回はお話しします。
まず、窓の役割としては、採光(室内へ自然光を取り込む)に加え、換気(新鮮空気を取り入れ澱んだ空気を排出、暖かい空気・冷たい空気を屋内へ取り込む)といった住環境において果たす役割のほか、建物のデザインにおけるアクセント、窓によって外の景色を切り取って室内に取り組む(ピクチャーウィンドウ)といった意匠的な役割もあります。バルコニーに設ける掃き出し窓は、引き違い戸として内外の出入口をつなぐ役割もあります。その他、災害時等における避難出口としても、窓が活用されることがあります。
採光、室内へ自然光を取り入れるに際しては、直射日光をそのまま取り入れる方法、直射日光以外の自然光を取り入れる方法が主にあります。後者としては、天空光(太陽光が大気中に拡散し地表へ降りてくるもの)、地物反射光(直射日光や天空光が地面や建物等に反射するもの)などがあります。
皆様 ご存知のように、直射日光の注ぎ方には、季節ごとにバリエーションがあります。
・春、秋 : 春分の日と秋分の日は、真東から日が上り真西へ日が沈み、太陽の南中高度は55度。春の終わりや秋の始まりは日差しが強いが、比較的過ごしやすい、心地よい日差しといえる。
・夏 : 夏至の日は、太陽の南中高度が約80度。昼の時間が長く日差しが強い季節。日中は太陽の南中高度が高いため、壁面よりも屋根面に多くの日が当たる。夕方は、日が沈むため、強い西日が壁面へ注がれる。
・冬 : 冬至の日は、太陽の南中高度が約30度。昼の時間が短く日差しが弱い季節。日中は太陽の南中高度が低いため、壁面へ直射日光が多く注がれる。
日本の家屋では、夏と冬の直射日光の注ぎ方へうまく対応すべく、軒や庇が設けられています。夏は日中の強い日差しを避けるために、逆に、冬は暖を取ることを目的に直射日光を窓を通じて室内へ注ぎ込ませるように、軒の出が設けられています。夏の強い西日は軒や庇で遮ることが難しいため、雨戸やブラインド・ルーバー・格子戸などを利用して水平方向の日差しを避ける工夫が為されているものと思います。
直射日光を除いた間接的な自然光(天空光、地物反射光)をうまく室内へ取り入れることで、より快適性の高い住空間となります。特に、日中、北側の窓から注ぎ込まれる光には、直射日光の持つ強さや不快さはなく、やわらかく安定しているため、心地良い空間の創出に大変役立ちます。東西の窓は、朝夕の太陽高度が低い時間帯は直射日光が窓を通じて室内へ差し込みますが、北側の窓は1日を通じてほぼほぼ直射日光が差し込まず安定した自然光を得ることができます(稀に西日がごく短い時間だけ差し込むようなこともありますが気にならない程度でしょう)。
近年の日本では、高気密・高断熱の家屋が増えているため、窓を使った自然光採取や通風・換気に頼らずとも、空調設備と照明設備によって快適に過ごせるようになりました。一方で、設備機器に依存した住環境の構築は、自然に優しいものとは言えず、サステナブルとは言い兼ねます。そのため、設備機器に頼らない従来からの通風、換気、採光といった方法を上手く活用することを念頭において建物の設計段階から計画を進めることは大切です。都市において建物が密集する地域では一概にはそうとも言えませんが、日本における一般的な住環境であれば自然光や自然換気を用いた従来の方式の方が、人工的な照明や空調よりも、よりサステナブルで心地良い住空間と言えるかもしれません。ただし、近年の日本では、徐々に気温が高くなっている実際もあり、人工的な機械設備も併用した上で、その時々の快適な住空間を維持することが健康上は望ましいでしょう。
余談になりますが、窓は、建物において断熱効果が最も弱い箇所のひとつです(熱が伝わりやすい部位です)。そのため、窓周りの断熱効果を如何に向上させるかといった視点で考え出された手法が数多あることも事実です。断熱という観点だけで考えると窓を無くせば良いのでは?という考えも浮かびますが、法規上 衛生的な観点において最低限必要な採光のための窓のサイズが定められており(採光面積)、必要な採光が確保できない住宅は原則として建てられません(不可能では無いですが実現するにあたり技術的なハードルが高く、そもそもの話として、建物衛生上、避難安全上、精神衛生上 好ましくないため おすすめしません)。今回は、”採光” について取り上げています都合により、窓と断熱については、またの機会に触れたいと思います。
以上、”採光” について簡単に述べてきました。住まいにおける採光を工夫することで、より快適な生活空間を創出することができます。皆様の生活のヒントとして活用頂けますと幸いです。
”ねこのて” では、住まいにおけるアレコレについて、ひとりひとりのニーズに合わせて、個別にサポートいたします。お仕事のご依頼に限らず、日々の暮らしにおける ちょっとした疑問などありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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